中国国外NGOの代表事務所の 抹消手続及び注意事項


中国国外NGOの資金、中国での業務の方針、中国国外の銀行の低金利政策の影響など、さまざまな原因により、中国国外NGOが中国国内の代表事務所(以下「代表事務所」といいます)を廃止することもよくあります。中国国外NGOの代表事務所の抹消手続は、外資企業又は外国企業の在中国代表事務所の抹消手続とは異なります。本稿では、関連手続及び注意事項について、簡潔にご説明いたします。

  1. 抹消手続
     代表事務所の廃止は、下記のステップに従って行わなければなりません。まず、国外NGOがその中国国内の代表事務所の廃止について書面による決定を行います。それから、1)社員の解雇・処遇、2)税務抹消3)外貨管理局の外貨事務完了又は外貨事務非該当の証明、4)銀行口座の抹消5)業務主管機関の承認取得6)公安登記抹消などの手続を順番に進めます。
    1. 社員の解雇・処遇
       代表事務所は法人格を持たず、単独で従業員を雇用することができません。このため、中国国内で労働者を使用する場合、代表事務所は労務派遣の方式を採用することになります。具体的には、労務派遣会社と労務派遣協議書を締結し、労務派遣会社が自社と労働契約を締結している者を代表事務所へ派遣して勤務させます。
      代表事務所を廃止する場合、まず、代表事務所の社員及び労務派遣会社と派遣社員の返還及び派遣協議書の解除などについて、適切な処理を行わなければなりません。中国の労働契約法、労務派遣暫定条例の関連規定及び労務派遣協議書における約定に従って経済補償などを支払わなければなりません。
    2. 税務抹消
      代表事務所を抹消する前に、中国の税務機関において税金清算抹消手続を行わなければなりません。従前と異なり、現在では国税と地方税の抹消手続は統一化されたため、税務機関の指定窓口でまとめて処理することができるようになっています。通常は、国家電子税務局のウェブサイトにおいて、実名で税務手続を行う者が税務要求手続に従って税務抹消手続を行います。具体的な手続は次のとおりです。第一ステップ 電子税務において清算確定申告を行い、かつ当期において申告すべき税目を申告する。
      例えば、当年度7月に税務抹消を行う場合、通常は、7月の個人所得税、増値税及び附加税、第3四半期の企業所得税、当年度の企業所得税年報、第3四半期の財務諸表、清算申告表などについて申告する必要があります。第二ステップ 指定税務局窓口において抹消手続を行う。
      税務局の受付で紙版の「企業清算所得税申告表」、「非居住者企業所得税源泉徴収申告表」、「非居住者個人所得税代理控除代理納付申告表」を提出します。その後、電子税務局において抹消申請提出します。管理所によるオンサイト審査を受ければ、その場で抹消結果を受け取ることができます。
    3. 外貨管理局の証明
      外貨管理局で外貨事務完了又は外貨業務非該当の証明を発行してもらいます。
    4. 銀行口座の抹消
      銀行の要求に従って資料を提出し、基本口座・外貨口座の抹消手続を行います。
    5. 業務主管機関の承認
      業務主管機関の承認を取得し、公安局の登記抹消表に業務主管機関の公印を押捺してもらいます。通常は、業務主管機関より、中国国外NGOの本部の代表事務所抹消の決定についての決定書、並びに代表事務所の状況説明及び申請書の提出を求められます。
    6. 公安機関での登記抹消手続
      通常は、下記の資料を提出する必要があります。
      1. 抹消登記申請表
      2. 清算報告書(社会保険料の清算状況を含む)
      3. 税務機関が発行した、税務登記抹消証明又は税務登記手続を行ったことがないことについての証明
      4. 外貨部門が発行した、関連事項の清算が結了済みであること又は関連登記手続を行ったことがないことについての証明
      5. 銀行口座抹消証明
      6. 印章返納に関する資料
      7. 登記証書の正本、副本
      8. 登記管理機関が提出を求めるその他の書類

2、注意事項

代表事務所の抹消手続において、社員の労務派遣関係の解除が非常に重要になります。我々の知るところによれば、社員の労務派遣関係解除の問題を適切に処理することができなかったことにより、代表事務所の廃止を決定してから一年余りの時間を経ても、抹消手続を行うことができなかった代表事務所もあります。労務派遣関係の解除において、最初の段階では、労務派遣協議書の内容の審査だけでなく、(従業員から損害賠償請求がなされるのを防ぐため)派遣期間において代表事務所が完全に適法に労働者を使用していたかどうかについて確認を行う必要も出てきます。最後の段階では、労務派遣機構と派遣解除について法律や約定に基づいて交渉を行い、解除協議書を起草する必要があり、さらに、職員に対する経済補償の計算や交渉を行う必要もあります。こうした段取りにはすべて専門の法律知識や経験が必要となります。派遣関係の処理や経済補償金の計算などについては専門の弁護士を起用して対応させることをお勧めします。

税務抹消には、すべての税務事項の手続を結了し、当期の税目を申告する必要があります。現在の税務抹消手続は従前と比べてずいぶん簡素化されましたが、税務抹消手続を円滑に行うことができるようにするため、少なくとも三年分の帳簿及び税務諸表を事前に準備しておき、税務機関による事実調査を受けることとなった場合に迅速かつ遅滞なく対応することができるようにしておくことをお勧めします。

抹消手続を決定及び開始する前に、業務主管機関及び登記主管公安機関に連絡を取って状況を説明し、先方と直通の連絡手段を確立しておくことが一番望ましいです。こうすることで、その後、抹消手続を円滑に進めていく上で、業務主管機関及び主管公安機関の理解やサポートを受けられやすくなります。

当弁護士事務所は、日系の中国国外NGOの代表事務所の抹消経験があり、抹消に関わる税務財務問題について専門の会計士提携チームを擁しており、法律、人事労務、税務、手続などあらゆる方面から抹消サービスを提供することが可能です。また、抹消手続においては、日本への長年にわたる留学経験や長年にわたる弁護士の実務経験を有する、中国国外NGOの代表事務所の設立、活動報告、廃止などの事務の処理について豊富な経験を有する弁護士がプロジェクト責任者となり、抹消手続全体についてワンストップサービスを提供します。責任者は各部門との間の円滑なコミュニケーションを確保すべく、お客様からのご要望に応じて、中国の各主管部門との窓口として、日本にある中国国外NGOと連絡を取ることも可能です。


*本記事は、中国の法律に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。
また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。
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